2018年4月27日金曜日

インドでの調査:2017年9月3日〜10月26日

2017年9月3日〜10月26日までインドで調査を実施しました。今回の調査は、ケーララ州およびマハーラーシュトラ州での南インド巨石文化期の墳墓群の分布調査、ケーララ州での南インド巨石文化期の考古資料の記録化、ハリヤーナー州での北インド鉄器時代関連の考古資料の記録化が目的でした。

ケーララ州では、ケーララ州立大学考古学科と共同で、東部の西ガーツ山脈の山間地域にあるマラユール地域およびトリシュール地域に所在する墳墓群を対象として、悉皆的な分布調査を行いました。マラユール地域ではこれまでにも多くの研究者が調査を行い、研究成果を公表してきましたが、悉皆的な分布調査はなされておらず、墳墓群の実態が不明でした。そこで高精度GPSを用いて墳墓の位置を記録し、その大きさや形態などの基本的なデータを作成しました。同様にトリシュール市の東に広がる丘陵地帯に分布する墳墓遺跡でも分布調査を行いました。

ケーララ州マラユール地域コーヴィルカダヴ墳墓群

ケーララ州は沿岸低地部から丘陵地帯、さらには山脈地帯までさまざまな地形環境を内包しています。そうした多様な地形環境に、さまざまな巨石文化期の墳墓が残されています。インド半島部の南端に位置することもあり、南インド巨石文化の展開において重要な地域ですが、これまでは墳墓遺跡の体系的な記録化は行われておらず、実態がよくわかっていませんでした。悉皆的な分布調査を進め、多様な墳墓形式の分布パターンと地形との関係を明らかにすることはこの地域における巨石文化の展開を研究する出発点になると考えています。

一方、マハーラーシュトラ州東部のナーグプル市周辺(古代にはヴィダルバ地域と呼ばれていました)にも多数の巨石文化期の墳墓遺跡が分布しており、数多くの研究者が調査を行っていますが、この地域でも悉皆的な分布調査が行われていないという現状があります。そこでマハーラーシュトラ州考古局ナーグプル支局と共同で、分布調査を行ってきました。この地域ではUAV(いわゆるドローン)を用いて広域に展開する墳墓群の測量調査を実施しています。この手法による測量調査によって、墳墓の分布パターンだけでなく、地形の詳細も記録することが可能で、これまでの研究ではよくわからなかった墳墓群の分布パターンの詳細を明らかにすることが期待されます。

こうした分布調査とともに、ケーララ州アルヴァにあるユニオン・クリスチャン・コレッジ博物館が所蔵する南インド巨石文化期の考古資料の記録化を行い、南インド巨石文化研究の基礎データを得ることができました。

また、ハリヤーナー州では現地の大学院生が分布調査を行っているラージャスターン西部の遺跡群から採取された北インド鉄器時代の考古資料の記録化を行い、南インドの鉄器時代文化との比較研究を進めました。

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