2016年1月12日火曜日

研究論文「「南アジア系」石製装身具の生産と流通に関する覚書」

『第22回ヘレニズム〜イスラーム考古学研究』に「「南アジア系」石製装身具の生産と流通に関する覚書」と題した研究論文を発表しました。

この論文では、南アジアにおける青銅器時代〜鉄器時代の石製装身具の変遷を概観するとともに、西アジア、東南アジアにおける資料についても概観し、南アジア系石製装身具との関係を考察したものです。

http://southasia.world.coocan.jp/Uesugi_2015g_HR.pdf

青銅器時代以来、南アジアは石製装身具の生産の中心とみなされてきましたが、具体的に西アジアや東南アジアで出土する石製装身具が南アジアのそれとどのような関係にあるのか、南アジア周辺地域で出土する石製装身具が本当に南アジア産なのか詳細な検討が進んでいません。

この論文での検討の結果(まだまだ予察的ですが)、青銅器時代、鉄器時代ともにかなり南アジア産もしくは南アジアの石製装身具の影響を受けたと考えられるものが、各地で出土していることを確認することができました。そうした中で、南インドも海洋交易に関わる地域として、周辺地域への石製装身具の拡散過程において重要な役割を果たしていたと考えられます。

南インド先史社会の変容を考えるときに、海洋交易は非常に重要なキーワードであることが再認識できました。今後の現地調査で石製装身具の研究を進めていければと考えています。

研究発表「南アジアにおける鉄器時代の諸相」:2016年1月9日



1月9日に第9回アジア考古学四学会合同講演会にて、「南アジアにおける鉄器時代の諸相」と題した講演をさせていただきました。

南アジアにおける鉄研究の歴史、北インドおよび南インドにおける鉄器の特徴、そして鉄器が導入された歴史的背景についてお話をさせていただきました。

南アジアの鉄については、さまざまな先行研究がありますが、その起源や拡散の過程、またどういった社会状況の中で鉄が導入され普及していったのかわかっていないことが数多くあります。そうした研究の現状を確認する程度の内容でしたが、村上恭通先生(中央ユーラシア・東アジア)、山形真理子先生(東南アジア)、津本英利先生(西アジア)のご講演内容と関連づけると、今後の研究の出発点を準備することができたのではないかと考えています。